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私は親父が大嫌いだ。

子供の頃から遊びやいたずらが大好きやんちゃだった私は、厳格な親父からはこっぴどく怒られる毎日を過ごしてました。
自衛官だった親父は、勉強の出来る優秀な兄とは違う私に、「お前は運動が出来るから自衛官になれ。」としか言いませんでした。
選択肢の無い将来のレールには、どこの世界でも反発するもので、「自衛官にだけはならない」と決めていました。
親父との確執も日々強くなり分厚い壁ができ、何時間もの説教で怒られてる頭の中には「いつかみてろよ。必ず強くなって見返してやる」がエンドレスリピートし、やがてそれが小さな頃の私の「夢」となりました。

そんな日々でもスポーツに夢中な時は嫌なことも忘れる事ができました。
小学校は野球・中学校はバレーボール・中学のバレーの顧問から高校はハンドボールをやらないかと、誘われ利府高校のハンドボールの恩師の下に紹介して頂きました。
「仲間達と高校総体で優勝し全国大会に出場する」
夢に向かって、厳しい練習を一生懸命耐え抜き、創部3年目の1回戦突破したことの無い駆け出しのチームが宮城県の優勝・準優勝と各大会を勝てるまでに成長しました。
そしての最後の高校総体。利府高校創部以来の初の全国大会出場の快挙の期待で、誰も応援に来ることもないハンドボールの試合が、満席の会場に。
士気の高揚と共に、いつもと違い浮き足立ってる我がチーム。。
準決勝。思いもよらぬ伏兵に１点差で破れ、屈辱のベスト４。会場の期待に応えられず、会場からのため息・がっかりした同級生や後輩達の顔を見ることさえ出来ませんでした。

夢破れ、目標も将来も考えられないままの日々。進路のことで親父と口論から取っ組み合いとなりましたが、チカラで制する事が出来なくなった私に対し「今後、金銭面の援助は一切しない。」と武力弾圧から経済制裁へ。
「自分の分は自分で稼いで見せる」と啖呵をきり、ピザ屋のデリバリーのアルバイトに没頭。がむしゃらに働き、労働の大変さ・楽しさ・給与の嬉しさをここで学びました。
兄と比較され、大学は国立しか認めないと主張するので、なんとなく思っていた体育教師はあっさりあきらめ、高校ではスポーツ科だったこともあり、とりあえず入れそうなスポーツ系専門学校へ。何も夢もないままピザ屋でお金を稼ぎ、遊ぶ日々。

さぁ就職活動が始まりました。
友達はそれぞれジムやトレーナー・インストラクターなどに就職する中、夢も目標も何も無い私は求人雑誌で「高収入・週休２日・ボーナスあり」の仕事を探す。
そして見つけた条件の良い「営業職」にすんなり合格・内定証が送られてきたのでとりあえず両親に見せました。
すると内定証と会社のパンフレットを見た親父が
親父「なんでこの仕事を選んだ？これはどんな仕事かわかってるのか？」
私「営業でしょ？条件が良かったから」と答える
次の瞬間、親父はいきなり内定証を破り捨てた。
私「なにすんだよ！自衛隊になんて入らないからな！」
親父「先物取引って知らないだろ。この営業は、人を不幸にするかも知れない営業だって知ってるか？お父さんはこれで失敗して自殺した人を知っている。お前が売ったもので、その人が自殺でもしたらどう思うんだ。」
私「・・・。」
親父「人にありがとう、あなたのおかげでって感謝される仕事を考えろ！！」

その時は、《自衛官になれってしか言わなかったくせに》と思ったが、考える良い機会になった。

「人に感謝される。ありがとう、あなたのおかげで。」か・・・。

もう一度、考えを改めて専門学校の数少ない残り物の求人票をボーっと眺める。
そこには月給１５万休み５日のスポーツマッサージの求人が残っていました。
《小さい頃、親父に揉めって言われて嫌々だったが、やってあげるとありがとうって言われたっけな》
とふと思い出した。

あの就職活動で、スポーツマッサージの会社に入り、すばらしい先輩達に出会った。
マッサージだけじゃなくもっと治療技術を持ち治療家へなれば独立開業も叶えられる「夢」。
そして「２０代前半の生き方で人生は変えることができる。」今からでも遅くはないと。
お金を貯め、鍼灸柔整専門学校に２２歳で入学。働きながら何とか学費を払い、今まで全くしなかった勉強を頭を抱えながら必死になって勉強した。卒業時には学年５位の成績で校長賞も頂いた。国家資格取得後、青葉区中山の中山鍼灸整骨院にて修行し技術を学ばせて頂きました。
今振り返っても「２０歳～３０歳」までの１０年間は、本当に苦しい修行期間だったが、「夢」を持っていたから頑張れた。

そして、親父は私が整骨院を開業する３ヶ月前にすい臓がんで亡くなった。
「いつかみてろよ。大成して見返してやるんだ。」
この「子供の頃からの夢」は一生叶わなくなった。

今では「ありがとう。先生のおかげで」とより多くの患者さんから言われるのが「夢」となり原動力となっています。

皮肉にもあんなに反発していた親父の言葉が、今の人生に繋がっていたのを思い出し、一気に走り書きました。

そして、やりっぱなしで私の前からいなくなった親父にいえなかった一言がある。

「ありがとう。親父のおかげで。」